五反田団といわきから来た高校生『3000年前のかっこいいダンゴムシ』の感想

アンケートを出せなかったので、無理で失礼なお願いと思いながら、制作の方に渡して頂けないかとお願いをしたところ。届いているといいなあ。以下は、ごく一部だけ改訂したもの。ちゃんとした(ってなんだよ)劇評はまた別所で書くと思います。

追記:最後、2010年2月21日、と入れるべきところを、2009年2月28日、と書いて送信してしまいました。もう10年代だし! 28日は来週だし!! せっかくのラブレターが台無しだ。しかし、この作品の良さっていうのは、相対的な「良い」ではなく、絶対的な「良い」なんですよね。演劇、本数それなりに観てると、良かったとか面白かったっていうのは、相対評価になりがちなんだけど、これに関しては他との比較対象とか考えるまでもない、絶対的な良さ、だった。

いわき総合高等学校の皆様

 昨晩の公演を拝見しました。とてもとても良かったです。直後ロビーで「すごくよかった!」と声をかけることしかできず、アンケートも提出しなかったことを後悔しています。あまりにも感動したからです。というか、今もその余韻で胸がいっぱいだからです。そこで、反則技と思いながらも、制作の●●さんにお願いしてこれを書きました。皆さんの手に無事渡っているでしょうか? 

 たぶん、皆さんが思っている以上に、皆さんの演技は観た人の心を揺さぶったと思います。ステージからは見えない風景でしょうが、皆が笑い、泣き、最後にはとてもハッピーな気分になっていました。そして、終演後、あるいは観劇後ひと晩経って、思い出して笑ったり泣いたり、あとは、ちょっと切なくなったりしていると思います。少なくとも僕はそうです。そして、数日後、数ヵ月後、数年後、また思い出して泣いたり笑ったりすると思います。皆さんは今回の体験を、今後の人生の中で「よき思い出」として幾度となく反芻するでしょう。でも、それは、観た人にとってもそうなのです。

 僕は日常的に芝居を見ますが、その中でも今回の公演はスペシャルでした。他に較べてよかったとか、何番目によかった、とか、そういう問題ではありません。ほかでは見られない、他とは明らかに違う、魔法がかかっていました。……って、我ながら陳腐な言い方だと思いますが、でもそれは多くのお客さんが感じ取っていたはずです。目に見えないし、言葉になりづらいけれど、確かに魔法がありました。そして、それはご本人たちは気づいていないのかもしれないけれど、高校3年生だからこそ立ち現れる類の魔法だと思います。もちろんそれを引き出したのは前田さんの手腕なのだろうけど、でも、もともとないものは引き出せない。原石のような輝きを放っていた皆さんの演技を、なんて眩しいんだろうと思い、目を細めながら、でもまばたきはせずに、拝見しました。

 35歳のおっさんのノスタルジーだろう、といわれればそれまでかもしれません。多くのオトナにとってこういう鑑賞が感傷の対象になりやすいのも事実です。でも、それだけじゃない、というか、そういうことじゃない。ここまで心を揺さぶられたのは、前田さんはもちろんですが、皆さんが素晴らしかったからです。そして、その素晴らしさに皆さんは(おそらく)自覚的ではない。だからこそ、より素晴らしかったのだと思います。プロフェッショナルな(?)演劇を観て、そういう「素晴らしさ」に出会うことは、滅多に、というか、ほとんどありません。お客さんがたくさん入っている演劇、有名で高名な演劇を見ても得られないものを、皆さんは与えてくれました。演劇をつくること、演劇を観ることのもっとも原初的な悦びを皆さんは教えてくれたのです。

 皆さんは、授業の一環として、演劇を「教わった」という感覚なのかもしれません。が、教えられたのは、僕や僕らのほうだったのでした。なので、お礼を言いたいです。本当にありがとうございました。今抱えている感情を、整える前に、なるべくシンプルに、皆さんに宛てて率直に書きたいと思い、これを記した次第です。今頃最後の回が終わっていることかと思います。お疲れ様でした、そして、本当にありがとうございました。 

2010年2月21日 土佐有明