朝っぱらから暗闇で人のセックスを見てしまった!

朝10時から人のセックスを見たい人はどれくらいいるのだろう?と思いながら徒歩1分の映画館(というかアートセンター)へジャージのままとぼとぼと。お客さんは自分含めて10人くらい。うち8割が女性。マツケン目当てなのだろうか、前列の学生っぽい子は『an・an』を、その隣の子はエコロハス系の雑誌を読んでた。競馬場にいそうなおじさんがひとり来ていたけど、もしかしたらこの方は本当にただ純粋に人のセックスが見たかったのかもしれない。というか、永作のセックスか。
感想は、んー、まず、『人セク』原作への思い入れが強い人は違和感あるだろうなあ、と。実質的な主役がえんちゃん(蒼井優)になってるし、皆絵に描いたような美男美女なので。永作はそれでも原作のキャラに近づこうと色気のなさを強調していたが、やっぱオーラが出ているので無理があったかなあ。
それはいいとして、いちばんひっかかったのは、永作とマツケンのえっちな……というかいちゃついてるシーン。ここがこの映画のキモであり最大の勝負どころだったと思うのだけど、あー、ハズしちゃったよー、と心の中でつぶやいてしまった。「ほら、つきあいたての恋人同士が行為前/後にいちゃいちゃする時ってこんなだよね?ね、こんなでしょ?」というのをおしつけられたかんじ。役者も監督も自然体であろうとすることを意識しすぎて、逆にリアリティーを喪失してしまったようだった。あとキャスティングの問題もおおきかったのではないかな。あれだけの美男美女がいちゃついてると、年齢差がどうこうとか関係なく、何をやっても絵になりすぎてしまって、生活感とか生々しさが見事に漂白されちゃうんだよね。
はい、ここで、キョンキョンと亀梨君がいちゃついているところを想像してみてください。ほら、どんなかっこ悪い服着てて、だらしない格好して、歳が離れてても、ちゃんと絵になってしまうでしょ? それと同じなんだよなー。そんで、ポツドールのラブシーンの生々しさってすごいよなーとか考えながら見ていた。演劇と映画を単純に比べるわけにはいかないし、目指すところが違うのは承知の上で言ってますが。
最後まで「きれいごとの恋愛」を見せられているようで感情移入できなかった。残念。きれいごとならきれいごとでかまわないし、きれいごと大好きなんだけど、それだったらうまく騙してほしかった。きれいごとだ、と意識させてしまった時点で失敗だと思う。映画を観ていて、あーこれフィクションだよなーと我に返ってしまう瞬間ほど、白けるものはないのだ。

しかし、最近映画観ても全然何も書く気起きなかったのに、なんでこんな書いてるんだ? 映画でも演劇でも、過不足なく満足させてくれるもののほうが逆に「あーおいしいもの食べた。満腹満腹」って感じで逆に感想が浮かばなかったりするなあ。特定の調味料が過剰に振られていたり、反対に足りなかったりすると、色々文句つけたくなるもんだ。塩味が足りん!とか、もっととろみをつけてくれ!とかね。あと、映画館でお金を払って見ると何か書きたくなる、というのはあるかも。アートセンターでは音楽映画特集もあるそうで、全作品1000円で観られる年間会員になったので、色々観てみよう。
http://kawasaki-ac.jp/cinema/index.html#d0805